自分がオーナーではないですが、これまで次の介護施設の経営に携わっており、現在進行形で経営をしています。
- 有料老人ホーム(サ高住)
- デイサービス
- 訪問介護(ヘルパー)
- グループホーム
- 小規模多機能ホーム
経営に携わる中でよく「介護施設って儲かるの?」と質問をされます。
介護施設の経営は他業界と違って特殊なものです。
本記事は実際に介護施設を経営している立場から「介護施設は儲かるのか」を解説します。
今回は「サービス付き高齢者向け住宅」のご紹介です。
【過去の記事はこちらから】
私は介護施設を経営する仕事をしています。 自分がオーナーではないですが、これまで次の介護施設の経営に携わっており、現在進行形で経営をしています。 有料老人ホーム(サ高住) デイサ[…]
私は介護施設を経営する仕事をしています。 自分がオーナーではないですが、これまで次の介護施設の経営に携わっており、現在進行形で経営をしています。 有料老人ホーム(サ高住) デイサ[…]
- 介護施設を立ち上げたい
- 介護施設を経営している
- 介護施設の裏側を知りたい
上記に該当する方にお役に立てる記事なので、最後までお付き合いくださいませ。
サービス付き高齢者向け住宅とは?
「サービス付き高齢者向け住宅」は要介護度がそこまで高くない高齢者を中心に入居が可能な高齢者住宅です。
高齢者が安心して暮らせるよう配慮された住環境と「安否確認・生活相談」といったサービスを提供しています。
また、ご自身の状態に合った他の介護サービスを柔軟に利用できます。
私たちが1人暮らしをするために、賃貸住宅を借りるのと同じイメージです。
また「サービス付き高齢者向け住宅」の「サービス」とは「安否確認・生活相談サービス」になります。
サ高住で「安否確認・生活相談サービス」は最低限行わないといけないサービスです。
介護が必要な場合は、訪問介護など外部サービスを個別に契約する形になります。
サ高住はあくまで「住まい」だけです。
その「住まい」の中で、入居者は生活に必要な外部サービスを受けて暮らしています。
サービス付き高齢者向け住宅は儲かるのか?
結論から先にお伝えします。
ここでも私たちが賃貸住宅を借りるイメージと一緒です。
よーく考えてみてくださいね。
「賃貸住宅」も「サ高住」と同様に家賃や共益費、管理費などを払います。
その「賃貸住宅」に何人も、あなたの安否確認や生活相談に乗ってくれる人が常駐していますか?
せいぜい日中に管理人の方がいるくらいではないですか?
よっぽど家賃を高く設定していたら話しは別ですよ(‘ω’)
相場通りの家賃収入だけでは、人件費分だけで利益が減り、儲からないのです。
「賃貸住宅」も「サ高住」も空室があればあるほど利益が出ない構造は同じです。
合わせて、経費の多くを占める人件費の管理が非常に重要になります。
サービス付き高齢者向け住宅のリアルな実情
ここからは実際に経営しているサ高住のリアルな実情を具体的にご紹介します。
サ高住増えすぎ問題
10年ぐらい前でしょうか。
国(サ高住の管轄は厚生労働省ではなく国土交通省)は、次のことを考えました。
- これから爆発的に高齢者が増えるけど、受け入れる施設が足りない!
- 介護度が高い高齢者は特養やグループホームにまかせるとして、介護度が低い高齢者を受け入れる施設が必要だ!
- よっしゃ!開設規制をゆるゆるにして、どんどん介護度が低い高齢者を受け入れてもらう住宅を作らせよう!
- 開設の基準はゆるいよー
- 補助金ジャンジャン出すよー
- 建設会社はサ高住を建てることで儲かるから協力してねー
甘い汁を吐き出しまくって、国はせっせと「サ高住を建てる」ことを民間会社や医療法人に促しました。
ここにサ高住の戸数経緯のグラフがあります。
※「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」HPから引用
「サ高住が増えたから高齢者の受け入れ先も増えて、よかったじゃないか!」となればいいのですが、、増えすぎて「需要」と「供給」がバランスが崩れてきているのです。。( ;∀;)
要するに「高齢者(入居を希望する方)よりサ高住の方が増えてしまった」ということです。
もちろん満室のサ高住も多数あります。
ただ何の営業努力もせずに、満室になるのは次の2つのカラクリがあります。
- 周りの相場より、家賃などの費用が極端に安い
- 医療法人設立で、病院や老健退院(退所)時に自動的に入居する流れが確立されている
逆を言うと、上記に当てはまらないサ高住は「営業努力」をしないと、満室にはなりません。
建設会社やコンサル会社が「建築」や「運営コンサル」で儲けたいために「ラクに儲かりまっせ!」と営業をかけてきますが、ラクに満室にできるほど甘くないと断言できます。
サ高住「囲い込み」問題
介護関係に従事されている方であれば、サ高住の「囲い込み」問題を聞かれたことがあると思います。
「囲い込み」は2つの問題に分類されます。
- 入居者に必要ない過剰な介護サービスを行う
- 同法人運営の介護サービス利用を強制する
①の具体的な例は、訪問介護で「毎日入浴サービス(身体介護)を行う」などが挙げられます。
高齢者の方の入浴は一般的には「週3回」程度です。
それを「週7回入浴をしてもらう」ということです。
明らかに過剰サービスですよね。。
②は同法人運営の介護サービスをおすすめするのは問題ないですが、強制利用させる問題です。
悪徳なサ高住になると「ウチのデイサービスを使わないと入居はお断り」「ウチのデイサービスを使ってくれると家賃を下げます」などと言ってきます。
しかし、これは実際経営していると「あそこのサ高住は、系列のデイ利用を条件に家賃を爆下げしている」という声を聞くことがあります。
サ高住は「本人の状態に合わせて自由に介護サービスを受けられる」というルールがあります。
この自由に選べるはずのサービスに制約をかけることが問題なのです。
なぜ「囲い込み」問題が起きるのか?
ではなぜ「囲い込み」問題が起きるのでしょうか?
サ高住は「家賃収入だけでは儲からない」とお伝えしました。
ではどこで儲けるかというと、同法人運営の介護サービスを利用してもらい、介護保険で儲けるのです。
逆に言うと、同法人運営の介護サービスを利用してもらわないと儲けがでないのです。
元々のサ高住の収益モデルがサ高住単体だけで儲けるのではなく、同法人の介護サービスで儲ける仕組みになっています。
そうであれば「ウチのデイを利用すれば家賃を安くします!」「ウチのデイ利用が入居条件です!」と言ってくる法人が現れるのも、当然と言えば当然なのです。
本当に「囲い込み」は悪なのか?
サ高住の収益モデルが「囲い込み」をしないと儲からない仕組みになっています。
国や自治体はこの現実からは目を逸らし「囲い込みは悪だ!」とだけ言っています。
同法人で「囲い込む」ことは、入居者の健康や状況管理を一元化して把握できるメリットもあるのです。
- 住まい→A法人のサ高住
- デイサービス→B法人のデイ
- 身の回りのお世話の訪問介護→C法人の訪問介護
住まいはA法人だけど、日中はB法人のデイに行って、入浴や部屋の清掃はC法人の訪問介護を利用している。
このような形だと法人が違うため、ご本人の健康状態や状況管理が情報共有が難しくなります。
だからと言って「ウチのデイを利用しないと入居させない!」は論外であり、選択の自由を奪っています。
囲い込みをしないと利益が出ないサ高住の収益モデルに問題があるのと、健康状態を一元管理できる囲い込むメリットもあるということです。
利益が出ずに、赤字になれば職員の給料を上げることもできません。
国や自治体、世間一般は次の矛盾したことを言っています。
- 介護職員の給料を上げろ!
- でも囲い込みはダメだ!
経営者から見ると「囲い込みしないと職員の給料を上げられない、、」これがホンネです。
「囲い込み」問題に関しては、サ高住設立の補助金を増額するなど「ただダメだ!」と言うだけでなく、抜本的な解決策が必要だと思います。
自由過ぎるルール問題
サ高住が抱えるもう一つの問題として、ルールがなく「自由過ぎる」ことが挙げられます。
「自由過ぎる不自由さ」と言いましょうか。。
とにかくサ高住にはルールがないのです。
介護保険が使われる施設は、設備基準や人員基準などがこと細かく決められています。
したがって、例えば特養やグループホームなどは、誤解を恐れず言うと、どこも「似たりよったり」なのです。
設備基準や人員基準が厳しく設けられてるので、そのルールを守ろうとすると、どこも同じようになってしまうのです。
サ高住は逆で「安否確認」と「生活相談」のサービスだけ行っていれば、他のサービスは何をしても良いですし、何もしなくても良いのです。
- 食事を提供しても、しなくてもいい
- 職員を何人配置してもいいし、1人でもいい
- 何部屋作ってもいい
- 介護保険以外のサービス料金を取ってもいいし、取らなくてもいい
自由な分だけ、正しく経営戦略を行わないと、儲けどころがすぐ赤字になってしまいます。
特養やグループホームは人員基準を守って、入所を増やせば利益は出ます。
ある程度、考えなくてもルールを守っていれば利益が出るのです。
サ高住はそうはいきません。
経営戦略を正しくしないと「満室なのに赤字」ということが平気で起こるのです。
住宅で「満室なのに赤字」って普通に考えればおかしいですよね。。
しかし、それがサ高住の経営の怖さなのです。
サ高住で儲けるためには?
ではどうすれば、サ高住単体で儲けをだすことができるのでしょうか。
※稼働率をあげるのは大前提です。この稼働率アップ方法は別の記事でご紹介します。
家賃に関しては、自社で補助金をもらってサ高住を建てた、大家さんがいて自社は運営だけをしているなど様々なケースがあります。
人件費はサ高住を運営している限り必要な経費です。
人件費を抑えるため、生活に必要なサービスは介護サービス(デイ、訪問介護、訪問看護)にまかせます。
もし介護サービスにまかすことができないものは、実費をいただくか本人か家族にやってもらうのです。
(コロナ渦で面会も禁止なので、家族にお願いすることもできなくなりました、、)
そして極力サ高住の人員を減らし、人件費を抑えないとサ高住単体では利益は出ません。
サ高住の理想モデルはこれだ!
しかし、同法人の介護サービスを使ってもらわないと利益は生まれません。
医療法人でサ高住を設立した場合を例にします。
病院(クリニック)で高齢者の患者さんがいる。
↓
高齢者の患者さんが一人で暮らすのが難しくなった。
↓
「サ高住」の入居をおすすめする。
↓
サ高住から同法人運営のデイサービスやヘルパーを利用してもらい、介護保険で収益を上げる。
↓
病院からサ高住に往診や受診を行い、医療保険でも収益を上げる。
↓
また介護度が高くなったり、医療的ケアやリハビリが必要になれば老健に入所してもらい、介護保険で収益を上げる。
↓
退所期間になれば、またサ高住に入居してもらう。
↓
さらに介護度が高くなりサ高住での生活が難しくなれば、これも同法人運営の特養やグループホームに入所してもらい、介護保険で収益を上げる。
最初は「病院の患者」でスタートしましたが、お亡くなりになるまで同法人運営のサ高住や施設で介護をします。
サ高住を軸として、病院往診、受診を行いながら。デイやヘルパーで普段の生活を支え、介護度が高くなれば施設に入所してもらう。
収益をサ高住単体で考えるのでなく、サ高住に入居してもらい、他の介護サービスを利用しやすくする。
今後のサービス付き高齢者向け住宅の展望
「えっ!儲からないのに!?」と思われたかもしれません。
先程お伝えしたように、社旗福祉法人や医療法人が「サ高住(在宅)を軸とした法人全体の収益の相乗効果」のためサ高住を建てます。
反対を言えば、単体のサ高住は淘汰されていき、単体でサ高住を新しく建てる法人はほとんどなくなるでしょう。
これは介護業界だけではない話しですが、さらに「小規模事業所」ほど生き残るのが難しい時代になります。
これからは病院も施設も多数持っている「大規模事業所」しか生き残れない時代が来ると思います。
収益の相乗効果や職員の確保も合わせて、サ高住でも例えばデイサービスでも「単体」で行うメリットが見つかりません。
まとめ
サ高住を実際に経営している立場から「サ高住は儲かるのか?」について、リアルな実情をご紹介しました。
言葉は悪くなりますが、、
- 今後高齢者が増えて、介護施設が足りなくなる!
- 設置基準のゆるいサ高住を建ててもらって、高齢者の受け入れ先を確保しよう!
国の案にうまく乗せられ補助金も活用しながら、この10年サ高住は乱立されました。
受け入れ先を確保したのは良いのですが、その受け入れ先は飽和状態です。
一体どれだけのサ高住が単体で利益を出しているのでしょうか?
そして最初はゆるかった設置条件も、事故や問題点が起きるたびに年々厳しくなっています。
今後は大手の医療法人や社会福祉法人しか、サ高住運営はできないのではないでしょうか?
同法人の他の介護サービスで利益を上げることができるので、サ高住の家賃自体を安くすることができます。
サ高住単体で経営しているところは家賃を上げれば、入居者は集まらないですし、家賃を上げないと赤字に陥りがちです。
この「負のループ」になってしまいます。
暗い話しになってすみません。。( ;∀;)
これが実際に経営しているリアルな実情です。
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私も介護施設で働いていますが、どの介護施設も人材不足ではないでしょうか。
これから介護施設が生き残るために、売上を上げることはもちろんですが、職員確保も重要課題です。
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同業者なので、あまり言いたくないですが、、、中には職場環境があまりよくない介護施設があるのも現実です。
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